ファーガソンゾーン
ファーガソンゾーンとは
ファーガソンゾーンは、Texas Christian UniversityのDr. Gary W Fergusonらが2010年に発表した研究「Voluntary Exposure of Some Western-Hemisphere Snake and Lizard Species to Ultraviolet-B Radiation in the Field: How Much Ultraviolet-B Should a Lizard or Snake Receive in Captivity?」(https://www.solarmeter.com/wp-content/uploads/ferguson-et-al-2010-zoo-biology.pdf)から生まれたものです。
この論文では、15種類の爬虫類について、野生の状態でどの程度の紫外線UV-Bを浴びているのかを研究し、4つのグループ(ゾーン)に分けられることを見つけました。この4つのグループが、今ではファーガソンゾーンと呼ばれています。
ネットでよく見かける形の表で表したのは、上記の論文を参考にした後継論文です。2016年にFrances Bainesさん達が発表した「How much UV-B does my reptile need? The UV-Tool, a guide to the selection of UV lighting for reptiles and amphibians in captivity」(https://www.jzar.org/jzar/article/view/150/89)に掲載されています。
Frances Bainesさん達の論文では、市販の紫外線ランプを使って、各ゾーン用のUVIレベルで紫外線照射することについて研究されています。また、ケージの中でどのようにファーガソンゾーンを形成するかについて、シェード・メソッドとサンビーム・メソッドの紹介がされています。
ファーガソンゾーン
ネットで「ファーガソンゾーン」で検索してよく見かける表には、主に5項目が書かれていますので、目的の爬虫類が自然界にいるときにどの程度日光浴をしているのかを参考にしたり、代表的な種類を参考にして、どのゾーンが適切なのかを探すことができます。
- ゾーンの番号(1~4)
- ゾーンに該当する種がどの程度日光浴をするかの概要
日本語の資料では、概ね以下のように訳されています。
なお、ファーガソン博士の論文では主観で判断したと書かれているので、感覚で選択してください。
また、白昼は11時~13時を指していると推測されます。(ファーガソン博士の論文には、9時から11時や15時から18時の照射量は、11時から13時に比べてかなり少ない、との記載があるため) - ゾーン1:薄明薄暮性・日陰性・夜行性
原文:crepuscular or shade; thermal conformer
日本語訳:薄明薄暮性(crepuscular、明け方と薄暮の時間帯に主として活発になる)および日陰性(shade dweller); 変温(thermal conformer、爬虫類は変温動物なので用語の使用が変な感じを受ける。おそらく、体温を周辺温度の変化に任せるがままにしている種を意味していると思います) - ゾーン2:たまに日光浴(主に朝方/夕方)
原文:partial sun or occasional full-sun basker; thermoregulator
日本語訳:部分的に日光が当たる、もしくは、たまに完全に日光が当たるところで日光浴をする;恒温(thermoregulator、上記同様に、体温を一定にしようと積極的に行動する種を指しているように思います) - ゾーン3:朝方/夕方に加えて、日中にも日光浴
原文:full-sun or partial sun; thermoregulator
日本語訳:完全に日光が当たる、もしくは、部分的に日光が当たる; thermoregulator - ゾーン4:主に白昼に日光浴
原文:mid day baskers; thermoregulator
日本語訳:日中に日光浴をする; thermoregulator - 平均UVIの範囲
Frances Bainesさん達の論文から引用されており、本来の意図していることが非常に伝わりにくい表現になっています。
ファーガソン博士の研究では、研究対象となった爬虫類の種類ごとに平均値を出し、その平均値に基づいて爬虫類を4つのグループに分けました。
この4つのグループそれぞれにおいて、平均値を小さい順に並べると最小の値と最大の値が出てきます。「平均UVIの範囲」が意図しているのは、この最小値と最大値です。 - 最大UVIの範囲
こちらも、Frances Bainesさん達の論文から引用されており、本来の意図していることが非常に伝わりにくい表現になっています。
ファーガソン博士の研究では、研究対象となった爬虫類の種類ごとに平均値を出していますが、平均のもととなった数字の最大値と最小値、標準偏差が分かるようになっています。
「最大UVIの範囲」は、この最大値についての話です。上記の「平均UVIの範囲」と同様に各グループに分類された爬虫類が受けていたUVIの最大値を小さい順に並べたときの最小の値から最大の値までを示しています。
最大UVIは、その生体が「気が向いたら」それだけのUVIがあるところで日光浴をするという意味であり、そのUVIを全体に照射するのではなく、そのUVIでバスキング「できる場所を作る」ようにしておくと良いでしょう。 - 代表的な爬虫類の種類
ファーガソン博士が調べたのは15種類だけでしたが、Frances Bainesさん達の研究では254種類に拡大されています。
ケージ内でのファーガソンゾーンの作り方
Frances Bainesさん達の論文に基づくと、ゾーン1~2ではシェード・メソッドを使用し、ゾーン2で大きめのケージを使っている場合とゾーン3~4ではサンビーム・メソッドを使用します。
シェード・メソッド(ゾーン1~2用)
ケージ内のかなりの部分に対して「うっすら」と紫外線が照射されているようにします。
紫外線ランプ直下を当該ゾーンの「平均UVIの範囲」の最大値(ゾーン1では0.7、ゾーン2では1.0)にして、日陰(=UVIは0)に向かって、徐々にUVIが下がるようにライトを設置します。
シェード・メソッドには、蛍光灯タイプの紫外線ランプが良いです。また、ランプにリフレクターを付ける・付けないを調整して、UVIの照射量・照射範囲を調整してください。
夜行性の生体は体内でビタミンD3を生成できるので、紫外線は不要という話がありますが、まれに日中に見かけることがあったり、寝床に日光があたってしまったりなどで、日光にあたることがありますので、ゾーン1で軽く紫外線を受けることができるようにすることが望ましいでしょう。
サンビーム・メソッド(ゾーン3~4用)
自然界での、早朝から午前中にかけての日光浴の状態を目指します。この状態であれば、体温を調整しながら日光浴ができるため、長時間の日光浴ができると考えられます。
明るく照らされたバスキングスポットに対して紫外線を照射します。その際、強い紫外線が当たるのはバスキングスポットのみになるように注意してください。そして、日陰(=UVIは0)に向かってUVIが下がるようにライトを設置します。
照射する紫外線の量の最大値は、「最大UVIの範囲」の最大値を上限としますが、ゾーン4においてもUVI 7.0~8.0を超えないようにします。これは、UVI 9.5などでバスキングをしているケースがファーガソン博士の研究では見られているものの、ほとんどの場合は、それらの種においても主なバスキング時間は午前中の早いうちや、午後の遅めの時間であり、UVIは3.0~5.0(=熱帯地方において、快晴の日の8時30分~9時30分頃に直射日光の当たるところのUVI)であること、また、人工光は自然の太陽光とはことなるUVスペクトラムであることから、安全を考えての対策です。
なお、ゾーン2の種を大きなケージで飼育している場合にもサンビーム・メソッドを適用できますが、その場合の最大UVIは3.0程度に抑えてください。
紫外線の照射時間は、バスキング用ライトの照射時間(熱帯の種:1年を通じて12時間。亜熱帯の種:夏は13時間、冬は11時間。温帯の種:夏は13時間、冬は10時間)と同じ時間帯として、生体が望んだときにUVに当たることができるようにしてください。
サンビーム・メソッドには、水銀灯やメタルハライドランプ、紫外線照射量の多い蛍光灯タイプのランプなどの強い紫外線を照射できるランプが良いです。
ファーガソン博士の論文の中からの情報
- 実験期間は春から初夏(4~10月)にかけての繁殖シーズンでした。
- 研究対象の爬虫類が日光浴をしているのを見かけたときに、その時のUVIを測定しました。
- 使ったUVB測定器は、Gigahertz Optik UVB meter (Gigahertz-Optik,Inc., Newburyport, MA)、Solarmeter 6.2(以下S6.2) および Solarmeter 6.4(以下S6.4) (Solartech, Inc., Harrison Township, MI)です。
- S6.4の測定値(IU/min)は、Solarmeter 6.5m(実験では使用されていない)の測定値(UVI)を7.14で割ることで変換できることを利用して、S6.2およびS6.4の測定値をUVIに変換しています。そのため、論文にはもともとの測定値であるIU/minの測定結果も表記されています。
- UVIが高いほど総排出腔の温度も高くなる傾向があることが分かりました。(日光浴をしているので、体温が上がるのは当然の帰結だと思いますが。)
- 気温が高くなる(32度を超える)と日光浴が減る(日陰にいる)ため、気温が低いときに比べてUVBを受ける量が減ります。(これもそのとおりだと思います。)
- トカゲ(Texas Spiny lizards ー 学名 Sceloporus olivaceous)は、他の爬虫類よりも10時~14時は日光があまり当たらない(UVIの低い)ところを好むようです。研究期間が4~10月ですが、10月以外の月は、他の爬虫類が浴びているUVIの平均値よりも、トカゲの浴びているUVIの平均値の方が少ない結果になっています。10月は他の爬虫類よりも少し多いくらいになっていますが、サンプル数も少ないので誤差と言えるかもしれません。6月から9月はサンプル数が多いですが、各個体が浴びているUVIの平均値はかなり少ないため、トカゲは暑い時期の日中は日陰で過ごすのが好きなのかもしれません(論文内のFig.3より)。
- トカゲは、11時~13時に浴びるUVIの量が一番多いです。一方、一番少ないのは15時~18時です。9時~11時と13時~15時は大体同じくらいで、11時~13時と15時~18時の中間くらいのUVIの量になっています。(論文内のFig.4より)(トカゲは15時をすぎると、寝床を探しに日陰近くに行っているのかもしれないと思いました。)
その他の情報
ファーガソン博士との対話ビデオでは、各ゾーンの説明を以下のようにしていました。(日本語訳は筆者追記)
- Zone 1: 0.4 – 0.7 UVI (shade:日陰)
- Zone 2: 0.7 – 1.0 UVI (mostly partial sunlight:概ね部分的な日差しの下で)
- Zone 3: 1.0 – 2.6 UVI (mostly full sunlight:概ね完全な日向の中で)
- Zone 4: 2.6 – 3.5+ UVI (midday full sunlight:日中に完全な日向の中で)
出典:https://www.reptilecentre.com/blog/2020/04/a-conversation-with-the-creator-of-ferguson-zones-dr-gary-ferguson/
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